■マコの傷跡■

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chapter 9



~ chapter 9 “母のこと” ~




私の母親は看護婦だった。
その職業柄なのかどうかわからないがとてもクールな人だ。
悪く言うと喜と楽の感情に乏しい心にゆとりのない人。
私の記憶に残る母はいつもピリピリしたオーラを発しているか
もしくは疲れて寝ている。

私は幼稚園から小学5年生までピアノを習わされていた。
練習をしないとご飯を食べさせてもらえなかった。
少しでも違う鍵盤を叩くと後ろで立っている母の手が飛んでくる。
私はピアノが大嫌いだった。

私は忘れ物の多い子供だった。
学校の通知表をもらってくる日は必ず怒られた。
「だらしない!どうして忘れ物をするの!?」何度も叩かれた。
部屋の隅に追い詰められて叩かれ、泣き崩れてしゃがむと
「立ちなさい!」と言って蹴られた。

私は部屋の片付けが出来ない子供だった。
母は私の部屋にあるもの全てを窓から投げ捨てた。
手に持てる物全て。私も抱えられて落とされそうになった。
泣きながら、泥のついた自分の物を拾いに行った。

母は突然、思いついた様に台所の大掃除を始める。
全身からビリビリと怒りのオーラを発して
あるもの全てを動かして床も壁も隅々まで。
大掃除が終わるまで、台所には行けない。
当然ご飯も食べられない。


鬼ババアだと思っていた。
私は母を恐れていたし、嫌いだった。


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